狩猟を始めるにあたって、猟銃はあるに越したことはありません。
銃無しでも十分に獲物は取れるのですが、「銃があれば獲れた」「銃があれば楽だった」といった感じに、銃は狩猟の幅を大きく広げてくれます。
今回はそんな銃の所有を考えている狩猟初心者の方に向けた猟銃の選び方について、詳しく解説していこうと思います。
なお、ライフル銃に関しては、初心者にはまず許可は出ないので今回は解説しません。
銃の種類
まずは、日本において許可の出る銃の種類を書き出してみます。
上下二連銃
上下二連銃はクレー射撃においてもっともよく目にする銃です。銃身が上と下に2本ついているため「上下」二連銃と言われます。
上下二連銃には主に二つのタイプが存在します。
トラップ銃
トラップ射撃専用の銃です。狩猟で使っている人はあまりいません。銃身がフルチョーク(※銃身が狭くなっている)なので、スラッグ弾は使えません。
スキート銃
スキート射撃専用の銃です。トラップ銃に比べて銃身が短く、チョークがシリンダー(※銃身が開いている)になっています。チョークは交換できる場合が多いです。
水平二連銃
もっとも古典的な散弾銃です。現代においてわざわざこのタイプの銃を選ぶメリットはほとんどありません。
なぜ銃身が横並びに並んでいるかというと、昔の弾薬は発火不良が多く、不発であっても別の弾を撃てるように設計されているからです。そのため、水平二連銃はトリガーが二つ付いています。(なお上下二連銃は初弾の反動を利用して、次弾のトリガーが引けるようにスイッチが作動します。)
引用画像を銃器メーカーから探しましたが見当たらないので、新銃はないかもです….?
自動銃
銃弾のガス圧を利用して次弾を装填する銃です。ハンターの中で一番所持数が多い銃だと思います。
樹脂パーツが使われていることが多く、安価な銃を見つけやすいです。
一方で、樹脂パーツゆえにベタつきや割れが多く、耐久性があまり高くないとよく聞きます。
レピーター銃
自動銃のように装弾が自動装填されないタイプの銃をレピーター銃といいます。次弾の装填は手動で行うことが最大の特徴です。
なぜわざわざ手動なのかといいますと、自動銃は撃ったガス圧で次弾を装填しますが、このガス圧が必ずしも一定ではないので、たまに装弾不良を起こすケースがあります。俗にいう「ジャム」です。
その点、レピーター銃は手動で装填動作をするわけですから、自動銃よりもより確実に装填動作を行えます。
レピーター銃は主に次の二つのタイプが市販されています。
レバーアクション
レバー操作によって装填します。ターミネーター2でくるりと銃を回しているシーンが有名ですが、あれです。
ポンプアクション
銃床を手前にスライドさせることで銃弾を装填します。ザ・ショットガンといえばこれですね。
ボルトアクション銃
ボルトアクション銃は精密射撃に特化した銃です。これまでに紹介した銃とは異なり、100メートル以上離れた遠距離に使用します。
また、このタイプの銃はハーフライフルとも呼ばれます。ハーフライフルと呼ばれるのは、銃身にライフリングが半分だけ施されているためです。(銃身全てにライフリングがあるとライフル銃となり、10年以上の所持経歴がないと所持が認められません)おおざっぱに「ショットガンの弾薬が打てるライフル銃」と考えてもらうといいです。
ハーフライフルに使用する銃弾はサボット弾のみです。散弾もスラッグ弾も撃つことはできますが、本来の性能は発揮できないどころか、銃身の掃除が非常に大変になります。
ということで、初心者が最初に持つ銃ではありません。射撃練習もままならないので、警察もおそらく許可は出さないでしょう。
空気銃
装薬銃以外の選択肢として、空気銃があります。狩猟免許や所持許可申請でも区分が別になっていることからも、空気銃は装薬銃とは別物です。
空気銃は、獲物と狩猟スタイルがはっきりしてる方におすすめできる銃です。「獲物は鳥」「狩猟スタイルは遠距離精密射撃」、この二つが揃った場合に効果的な銃となります。
なお、お高いです…泣
おすすめなのは上下二連銃
銃の種類についていろいろと解説してみました。そんな中で筆者がおすすめする最初の銃は、上下二連銃のスキート銃(交換チョーク付き)です。この銃はできないことが無いといっていいほどオールマイティな銃です。
実際に筆者が最初に手にした銃は「ベレッタのシルバーピジョン」でした。ほんとにこの銃はいろんなシーンで活躍してくれています。
上下二連銃のメリット
そんな上下二連銃のメリットをさらに詳しく解説します。
標的射撃で練習しやすい
咄嗟の判断が求められる狩猟では、銃の扱いにもたつくようでは非常に危険です。
銃の扱いを確実にするには練習するしかありません。銃を練習するには当然射撃場に行くことになるわけですが、標的射撃では上下二連銃が広く使用されています。
自動銃ではだめなのか…というと、そんなことはありません。ただし、標的射撃という「スポーツ」には不向きなのは確かです。たとえば、空薬莢が隣の射台に飛んでいったり、装弾不良で撃ち直しが多発したり、脱法確認が視認しにくかったり…..。
そうした不向きな銃が故にスコアが上がってこないと練習に向かう足が遠くなることは間違いないです。
チョークの撃ちわけができる
散弾銃にはチョークという機構がついています。チョークとは銃身先の絞りのことです。実際には数ミリの違いでしかないのですが、この数ミリの違いが数十メートル先の散弾パターンに大きく影響します。
上下二連銃は銃身が2本ついています。銃身が2本あるということは状況に応じてチョークを使い分けることができます。たとえば、初弾をモデ、二の矢をフルチョーク、といった感じにしたりします。
自動銃ではすべてのクレーを同じ銃身で撃つ必要があり、このチョークの撃ち分けはできません。チョークを調整するには銃身そのものを入れ替える必要があり、交換チョーク式と比べると、持ち運ぶ荷物が非常に多くなります。
脱砲確認が楽
上下二連銃は脱砲確認が非常に簡単です。銃が折れていれば、絶対に弾丸が撃たれることはありません。また、周りの人に銃が発射不能であることを簡単にアピールできます。この「アピールできる」という点が重要です。
一方でその他の銃は、一見すると脱砲されているのか見分けることが難しいです。人間だれでもうっかりがあります。うっかり脱砲を忘れていた!、なんてことが起こらないとも言い切れません。その点、上下二連銃は物理的に撃てなくできるという構造があり、非常に安全性の高い銃であると言っていいでしょう。
装填音が静か
装填音が静かという点も、銃猟においては重要です。特に大物猟は少しの物音でも獲物に逃げられてしまうリスクがあります。
上下銃はその構造からゆっくりと薬室を閉めることで、ほぼ無音で発射態勢を作ることができます。
一方、自動銃は薬室を勢いよく閉める必要があるため、銃弾の装填をあらかじめ済ましておく方がほとんどです。つまり、いつでも撃てる状態を保持しておくわけですから、常に気を張っていないといけません。大物猟は二時間から三時間の長丁場になることが多く、その間常に気を張りっぱなしなのは非常に疲れます。
上下二連銃のデメリット
と、上下二連銃のいいところばかりを書いてきましたが、一方でデメリットがあることも確かです。
2発しか撃てない
上下二連銃は構造上2発しか連射できません。一方で自動銃は最大3発撃てます。この点が上下銃と自動銃の最大の違いです。
大は小を兼ねるといいますから、3発撃てた方が良いのは間違いありません。3発撃つ場面の具体例を上げると、
- 鴨の大群の飛来を迎え撃つ
- 大物猟で群に遭遇した
といった場面があります。こうした場面で3発撃てるということはそれだけ獲物を確保できる確率を上げることになるわけですから、上下二連銃にはできないことです。
値段が高い
銃のお値段は、
空気銃 > 上下二連銃 > 自動銃
となっています。もちろん銃の状態や型番によってまちまちですが、傾向としてはこうです。一番安く猟銃を持つのであれば、上下二連銃は自動銃には勝てません。
デザイン性が古めかしい
銃は見た目よりも性能ですが、わたしは銃にファッション性を求めることも間違いではないと思います。気分よく狩猟することも大事なことです。
その点、上下二連銃はその多くが木製です。どことなく古い感じのするビジュアルになります。一方で自動銃は樹脂パーツが使用されることが多く、現代的なデザインの銃が多いです。
樹脂パーツは経年劣化するため耐久性が低いという問題もあるのですが、今時な見た目の銃が欲しい方は選択肢になるでしょう。
そうした点からも、上下銃は見た目の選択肢に乏しいことがデメリットになります。
スコープが載せられない
わたしはこれが上下銃の最大のデメリットに感じています。上下銃はなんでもできる銃です。ただし、全てを最適にこなす銃ではありません。とくにスラッグ弾を撃つ場合はこれを如実に体感します。スコープが載せられる構造になっていないわけですから、基本的に遠距離であってもアイアンサイトで照準を合わせる必要があります。30メートル先に止まっている獲物を平気で外すことも結構あります。
一方で自動銃はスコープのマウントがあらかじめ彫られているものがあります。大物猟における精密射撃においては、やはり自動銃に軍配があがります。
スコープが乗った上下銃は残念ながら見たことがありません。鳥撃ちに使えなくなるし、着脱するたびに照準を合わせる必要がありますからね。それなら自動銃をもう一丁買って載せっぱなしする運用になるでしょう。
【おまけ】中古と新銃、どちらがいい?
基本的には中古銃でもぜんぜん問題無いと思います。
大事な銃だから、できるだけ綺麗なものがいい。中古は傷が多くて嫌だ。その気持ちはすごくわかります。ただし、
銃は使えば使うほど汚れます!新品のように綺麗に使うことは限りなく不可能です!
狩猟は雨の日も多いですし、朝から出猟すると夜露で濡れます。落ちた獲物を探して藪漕ぎもします。時には木にぶつけてしまうこともあるでしょう。
私の経験上、どれだけ気を使っても銃に傷は増えていきます。同時にそれが経験値の証と考えると、銃の綺麗さはぶっちゃけどうでもよくなりました。
そうしたことから、どうせ汚れていくものであれば、最初から汚れていても問題ないと思います。
さらにいえば、狩猟は銃だけでは出来ません。防寒ウェアだったり、双眼鏡だったり、車だったり….意外にも銃以外の出費が多いのが実情です。そうしたハンターギアに予算を回すことも大事だと思う次第です。
まとめ
というわけで、狩猟初心者に向けた猟銃の選び方を開設してきました。個人的には狩猟初心者の初めての一丁には「スキート銃」をおすすめします。
どうしても予算に折り合いがつかない場合は自動銃も選択肢に入りますが、これまで説明してきたように、上下二連銃は圧倒的にオールマイティです。
とはいえ、上下二連銃が実際に買えるかどうかは、ご自身が買いに行かれる銃砲店に在庫があるかどうかに左右されます。また、銃選びは人によって様々です。ご相談に行かれる銃砲店さんにもそれぞれの哲学があることでしょう。まずは銃砲店に一歩足を運んでみることをおすすめします。
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